生成AI入門コース
~第3話 プロンプトとは何か~
第2話では、従来型AIと大規模言語モデル(LLM)の違いを学んだ。従来型AIは分類や予測といった特定タスクに特化していて、用途ごとに別のAIを用意する必要があった。一方でLLMは自然言語の指示一つで幅広い作業に対応できる。トークン、コンテキスト、モデルという基本概念も整理して、神谷は「同じAIでも、伝え方しだいで出てくる答えが変わる」という入口に立った。今回はその「伝え方」そのもの——プロンプトを掘り下げていく。
神谷の初挑戦

第3回の学習が始まる前に、神谷は西園寺から小さな課題を出されていた。「ChatGPTに何か仕事で使えそうなことを頼んでみて」というものだ。何でもいいから、まずは触ってみる。それが今回の宿題だった。
神谷は少し考えてから、まるやまマートの商品説明に使えないかと思い立ち、こう入力してみた。
神谷が入力した内容:「商品説明を書いてください」
AIからはすぐに返事が返ってきた。しかし、その内容は神谷の期待とは少し違っていた。どの商品のことなのか、誰に向けて書くのか、どんな雰囲気にしたいのか——AIには何ひとつ伝わっていなかったので、当然のように、架空の商品について一般的な紹介文が返ってきたのだ。
その日の夕方、本部の小会議室で西園寺との学習時間が始まった。神谷は自分の体験を素直に話した。




プロンプトとは




西園寺は、プロンプトを「仕事の指示書」にたとえて説明した。たとえば会社で後輩に仕事を頼むとき、「資料を作って」とだけ言っても、相手は何の資料をどんな形式で作ればいいか分からない。目的、対象者、期限、形式を伝えて初めて、期待に近いものが出てくる。



良いプロンプトの要素

西園寺は、良いプロンプトに含めるべき要素を整理してくれた。

プロンプトの5つの要素(入門)
- 目的 — 何のために書くのか(例:ECサイトに掲載する商品説明文を作りたい)
- 背景 — 状況や前提条件、誰に向けた文章か(例:地域密着型の小売店のECサイト、子育て世帯のお客様向け)
- 材料 — AIに渡す具体的な情報(例:商品名、特徴、価格帯)
- 条件 — 制約やルール(例:200文字以内、丁寧な口調、専門用語は使わない)
- 出力形式 — どんな形で出してほしいか(例:箇条書き、段落形式、見出し付き)


改善してみる

神谷は西園寺のアドバイスを踏まえて、先ほどのプロンプトを書き直してみた。
改善後のプロンプト:
「あなたはECサイトの商品説明を書くライターです。以下の商品について、子育て世帯のお客様向けに、親しみやすい口調で150文字程度の説明文を書いてください。商品名:国産ひのきのお弁当箱。特徴:軽くて丈夫、天然素材、子どもが持ちやすいサイズ。」




5要素から4要素へ:呼称の橋渡し

神谷が安心しかけたところで、西園寺はもう一歩踏み込んだ話を始めた。



西園寺はノートを開いて、対応関係を書き出してくれた。
入門5要素 ⇄ 実務4要素の対応
- 目的(入門) → 目的(実務):何をしてほしいか。呼び方も中身もそのまま。
- 背景(入門) → 対象(実務):「誰に向けたものか」「どんな前提か」に視点を寄せて統合。
- 材料(入門) → 目的や条件の本文に溶かす:実務では別要素として立てず、指示文に直接書き込むことが多い。
- 条件(入門) → 条件(実務):文字数・口調・禁止事項など。呼称はそのまま。
- 出力形式(入門) → 形式(実務):呼び方を短くしただけ。中身は同じ。







📌 覚えるポイント
- プロンプトとは、AIに対する入力全体のこと。単なる質問やお願いではなく『仕事の指示書』と捉えるとよい
- 入門段階では、良いプロンプトの構成要素を『目的・背景・材料・条件・出力形式』の5つで覚えると整理しやすい
- 実務の現場では、同じものを『目的・対象・条件・形式』の4要素にまとめて呼ぶことが多い(『材料』は別要素にせず本文に溶かす)
- 5要素と4要素は呼び方と切り分け方が違うだけで、本質は同じ。資料によって数が違っても混乱しないこと
- プロンプトの書き方を工夫することを『プロンプトエンジニアリング』と呼ぶ。プログラミングではなく、言葉の使い方の工夫であり、練習で誰でも上達する
📖 覚える用語
- プロンプト
- AIに対して入力する指示や質問の全体。目的・対象・条件・形式(と必要なら材料)を含めることで、AIの出力の質が向上する。英語のpromptは「促す」という意味。
- プロンプトエンジニアリング
- AIから望ましい出力を得るために、プロンプトの書き方を工夫すること。プログラミングとは異なり、自然言語での伝え方の技術。練習で誰でも上達できる。
- 入門5要素(5要素)
- 良いプロンプトを構成する情報を、入門段階で全体像をつかむために5つに分けた整理。目的・背景・材料・条件・出力形式。要素ごとにラベル付けされているので最初の練習に向く。
- 実務4要素(4要素)
- プロンプトを実務でまとめる際によく使われる4つの軸。目的・対象・条件・形式。入門5要素の『背景』を『対象』に寄せ、『材料』は独立要素にせず本文へ書き込むスタイル。生成AI活用コース第1話で詳しく扱う。
- ロール/前提情報
- プロンプトの中で、AIに役割や前提条件を伝えること。「あなたは○○です」のような役割指定や、対象読者の設定など、出力を方向づける情報を指す。第2話の『コンテキスト(文脈)』とは別の概念。
- 今日学んだこと
- プロンプトはAIへの仕事の指示書。入門では『目的・背景・材料・条件・出力形式』の5要素で整理し、実務では『目的・対象・条件・形式』の4要素にまとめる場合が多い。呼び方は違っても本質は同じ。
- 自分で試したこと
- 「商品説明を書いて」という曖昧なプロンプトでは期待通りにならなかったが、5つの要素を入れて改善したら、まるやまマートの商品に合った文章が出てきた。
- 気をつけること
- 資料によって要素の数え方が違っても惑わされない。『AIが迷わないだけの情報を渡せたか』を見直すのが本質。AIが作った文章はそのまま使わず、必ず人が確認する。
