生成AI入門コース
~第5話 主要な生成AIサービスの全体像~
第4話では、AIがもっともらしいが事実と異なる内容を生成する「ハルシネーション」について学んだ。自然に読めることと正しいことは別であり、一次情報での確認、人によるレビュー、出典の確認が対処法として重要だと理解した。
どのサービスを使えばいい?

ハルシネーションへの対処法を学んだ神谷は、生成AIを実際に試してみたいという気持ちが強くなっていた。しかし、いざ使おうとすると、新たな疑問が浮かんできた。
神谷:「西園寺さん、ChatGPTのほかにもClaudeやGeminiがあるという話でしたが、実際にどれを使えばいいんでしょうか。違いがよく分からなくて」
西園寺:「いい質問ね、神谷くん。今日は主要な3つのサービスの特徴を整理しましょう。全部を覚える必要はないけれど、全体像を知っておくと選びやすくなるの」
神谷:「正直、名前は聞いたことがあっても、何がどう違うのかは説明できないんです」
西園寺:「大丈夫よ。今日は『開発会社』『得意分野』『料金構造』の3つの軸で並べてみましょう。あとで触ってみたときに、自分の感覚と照らし合わせやすくなるから」
神谷の心の声:ChatGPTは使ったことがあるけれど、ClaudeやGeminiは名前しか知らない。それぞれの会社や強みを整理してもらえると、自分でも比較しやすそうだ。
ChatGPT(OpenAI)

西園寺:「まずはChatGPTね。OpenAIという会社が提供しているサービスで、第1話でも紹介したとおり、生成AIブームの火付け役になったの」
神谷:「僕が最初に触ったのもChatGPTでした。スマホでもパソコンでも、ブラウザでチャットを開くだけで使えたのが印象的でした」
西園寺:「そう、入り口がチャットというのが特徴ね。ChatGPTの強みは、文章生成だけじゃなくて、画像生成、音声会話、Web検索、コード実行など、いろいろな機能を一つのサービスに統合していること。オールインワン型と呼ばれているわ」
神谷:「一つの画面でぜんぶできる、ということですね」
西園寺:「ええ。たとえばまるやまマートで使うなら、商品説明の下書きをしてもらいながら、必要に応じて画像案も同じ会話で出してもらう、という流れができるの。会話の流れの中で道具を持ち替えなくていいのが、初心者には大きな利点ね」
西園寺は料金体系についても簡潔に整理した。ChatGPTには無料プランに加えて、個人向けのGo、Plus、Proプランがある。Goは無料プランよりも多くのメッセージ、ファイルアップロード、画像作成などを使える低価格プランで、地域や条件によっては広告が表示される場合がある。より高度な推論や上限の大きい使い方にはPlusやPro、組織で管理して使う場合にはBusinessやEnterpriseが用意されている。
神谷:「無料でも使えるんですね。GoやPlusとの違いは何でしょうか」
西園寺:「無料プランでも基本的な対話はできるけれど、利用回数や一部機能には制限があるの。Goはそこを広げる低価格プラン、Plusはより高度な推論や多めの上限が必要な人向けね。ただしOpenAIの公式案内では、Goには広告が表示される場合があるとされているから、業務で使うなら広告の有無やデータの扱いも確認しましょう」
Claude(Anthropic)

西園寺:「次はClaude。Anthropicという会社が開発しているサービスよ。Anthropicは、もともとOpenAIで研究をしていた人たちが2021年に立ち上げた会社なの」
神谷:「OpenAIから独立した方たちが作ったサービスなんですね。何か違いがあるんですか?」
西園寺:「いい質問ね。Claudeの特徴は、安全性を特に重視した設計になっていることと、長い文章の理解が得意なことよ。たとえば、長い契約書やマニュアルを読み込ませて要約してもらうような作業に向いているの。出力の文章も落ち着いていて、ビジネス文書の下書きに使いやすいと言われているわ」
神谷:「安全性、というのは具体的にどういうことですか」
西園寺:「乱暴な要求や危険な内容を依頼されたときに、安易に応じない設計を最初から組み込んでいる、という意味ね。会社で使うサービスとしては、こうした性格は安心材料になるの」
Claudeにも無料プランがあり、基本的な対話を試すことができる。有料のProプランでは利用回数が大幅に増え、プロジェクト管理機能なども使える。企業向けにはTeamプランやEnterpriseプランもある。
神谷:「ChatGPTと料金の仕組みは似ているんですね」
西園寺:「ええ。主要なサービスの個人向け有料プランは、低価格プランから上位プランまで幅があるの。料金や広告表示の有無は変わることがあるから、細かい金額だけで比べるよりも、自分の使い方に合ったサービスを見つけることが大切よ」
神谷の心の声:安全性を重視している、という設計思想は気になる。社内で使うことを考えると、出力が暴走しにくいというのは大きな安心材料だ。
Gemini(Google)

西園寺:「3つ目はGemini。Googleが提供しているサービスよ」
神谷:「Googleなら、僕も普段からGmailやGoogleドキュメントを使っているので、馴染みがあります」
西園寺:「まさにそこがGeminiの強みなの。GmailやGoogleドキュメント、スプレッドシートなど、Googleの既存サービスとAIが連携できるのよ。すでにGoogleのツールを業務で使っている場合は、追加の導入コストが少ないのが利点ね」
神谷:「ふだんの仕事の流れの中にAIが入ってくる、というイメージでしょうか」
西園寺:「ええ、その通り。たとえば、長いメールスレッドを開いたままGeminiに要約や返信案を作ってもらう、というような使い方ができるの」
Geminiは無料で基本的な対話が使える。Google AIプランなどに加入すると、最新モデルやGoogle Workspaceとの連携機能が利用できる。
神谷:「うちの会社でもGoogleのツールを使っているので、連携できるなら便利かもしれません」
西園寺:「そうね。ただし、どのサービスにも得意・不得意があるから、一つに決め打ちするのではなく、まずは複数を試してみることが大切よ」
3つのサービスを比較する
西園寺は3つのサービスの特徴を、神谷にも分かりやすいように表にして整理してくれた。
| ChatGPT | Claude | Gemini | |
|---|---|---|---|
| 開発会社 | OpenAI | Anthropic | |
| 特徴 | 多機能オールインワン。画像生成・音声・コード実行まで統合 | 安全性重視の設計。長文理解・丁寧な出力が得意 | Googleサービスとの連携。既存ツールとの統合が強み |
| 無料プラン | あり(利用制限あり) | あり(利用制限あり) | あり(利用制限あり) |
| 個人有料プラン | Go / Plus / Pro(Goは広告表示の場合あり) | Proなど(利用上限を拡張) | Google AIプランなど |
| 企業向けプラン | Business / Enterprise | Team / Enterprise | Google Workspace連携 |
※ プラン名・料金・広告表示の有無は2026年5月時点の公式情報をもとにした概要です。最新条件は各サービスの公式サイトでご確認ください。
西園寺:「料金体系はどのサービスも頻繁に更新されるから、具体的な金額よりも構造を理解しておくことが大切よ」
神谷:「構造、というと?」
西園寺:「どのサービスも基本的に3段階あるの。①無料で試せるプラン、②個人向けの有料プラン、③企業向けの管理機能付きプラン。まずは無料プランで試して、必要性を確認してから有料化を検討する、という流れが一般的よ」
神谷は西園寺の整理を聞いて、まずは3つのサービスを無料プランで試してみようと思った。
神谷:「まずは無料で3つとも触ってみて、使いやすさの違いを自分で確かめるのがよさそうですね」
西園寺:「ええ。同じ質問を3つのサービスに投げてみて、回答の違いを比べてみるのも勉強になるわ。そうすると、自分の業務に合ったサービスが見えてくるの」
神谷の心の声:3つとも無料で試せるなら、まずは触ってみよう。同じ質問をして比べると、違いが自分の言葉で説明できるようになる気がする。
UI利用とAPI利用の使い分け
サービス選びの話が一段落したところで、神谷はもう一つ気になっていたことを切り出した。「API」という言葉と、ふだん自分が触っているチャット画面が、頭の中でうまくつながっていなかった。
神谷:「西園寺さん、もう一つ伺ってもいいですか。社内で『APIで連携する』という言葉を耳にしたのですが、ふだん僕が使っているチャット画面とは別のものなんでしょうか」
西園寺:「いい質問ね、神谷くん。生成AIを業務で使うときには、大きく分けて2つの入り口があるの。1つは『UI利用』、つまりブラウザのチャット画面から直接話しかける使い方。もう1つは『API利用』、自社のアプリやシステムからAIをプログラムで呼び出す使い方ね」
神谷:「APIで呼び出す、というのは、エンジニアの仕事ですよね」
西園寺:「実装は技術者が担当するけれど、『どこでAPIを使うか』を決めるのは現場の判断なの。今日は2つの入り口があるということと、どちらに向くかのざっくりした目安だけ押さえておけば十分よ。APIそのものの仕組みは、後の『IT基礎』第9話で詳しく整理するから」
西園寺は、2つの入り口の向き不向きをまるやまマートの業務に当てはめて、ごく簡単に整理してくれた。UI利用は、人間が画面の前に座って質問しながら使う形。商品説明の下書き、メール返信案、調べ物の壁打ちなど、一回ごとに内容が違う・人の判断が必要な作業に向く。月額制が基本で、コストの予測がしやすい。
API利用は、AIを「自社のシステムの部品」として呼び出す形。問い合わせフォームに届くメッセージを自動で分類する、レビュー文を毎晩バッチで要約する——といった「決まったパターンの作業を大量にこなす」場面に向く。料金は処理した量に応じた従量課金が基本で、具体的な仕組みは『IT基礎』第9話で扱う。

西園寺:「この4象限を頭に入れておくと、社内でAIの活用案が出てきたときに『これはUI利用で十分』『これはAPI連携にすべき』と整理しやすくなるの」
神谷:「なるほど……。たとえば、商品説明文を1日1〜2件作るのはUI利用、お問い合わせフォームに届く何百件のメッセージを毎日分類するならAPI利用、ということですね」
西園寺:「その通り。それから、いきなり右上の自社組込みに飛びつかないことも大事よ。まずは左下のUI利用で、本当にAIが効きそうかを試して、効きそうだと分かったら右上に進む。そういう順番が安全なの」
神谷:「来年の子育て家庭応援フェアでも、まずはUI利用で商品紹介文やお知らせ文の下書きを試して、量や定型性が見えてきた業務だけAPI利用を検討する、という順番でやってみます」
西園寺:「いいわね。フェアの準備は『手で1件ずつ書いてみる』段階から始めて、繰り返しが多い作業が見えてきたところでAPIに置き換える、で十分間に合うわ」
神谷の心の声:UI利用とAPI利用は、同じ生成AIへの入り口が2つあるだけのこと。難しい仕組みは後のコースで扱うと聞いて少し安心した。来年の子育て家庭応援フェアでも、最初はUIで試して、量や繰り返しが見えてきたところだけAPIを検討すれば、無理なく広げられそうだ。
📌 覚えるポイント
- 主要な生成AIサービスとしてChatGPT(OpenAI)、Claude(Anthropic)、Gemini(Google)の3つがある
- ChatGPTは多機能オールインワン、Claudeは安全性と長文理解、GeminiはGoogleサービスとの連携がそれぞれの強み
- どのサービスも無料プラン → 個人有料プラン → 企業向けプランという3段階構造。ChatGPT Goのように広告が表示される場合があるプランもある
- 業務での使い方には「UI利用(人が画面で操作)」と「API利用(システムが裏側で呼び出し)」の2つの入り口がある
- 利用頻度×自動化必要度の4象限で整理し、まずはUI利用で試して、効きそうな業務だけAPI利用を検討する
- APIそのものの仕組み(呼び出し方や従量課金)は『IT基礎』第9話で詳しく学ぶ
📖 覚える用語
- ChatGPT(OpenAI)
- OpenAI社が提供する対話型生成AIサービス。文章生成に加え、画像生成、音声会話、Web検索、コード実行など多機能を一つに統合したオールインワン型が特徴。
- Claude(Anthropic)
- Anthropic社が提供する対話型生成AIサービス。安全性を重視した設計と、長い文章の読解・要約が得意な点が特徴。OpenAIの元研究者が設立した会社が開発。
- Gemini(Google)
- Google社が提供する対話型生成AIサービス。Gmail、Googleドキュメント、スプレッドシートなど既存のGoogleサービスとの統合・連携が強み。
- UI利用
- ブラウザやアプリのチャット画面から、人間が直接AIに話しかけて使う形。利用頻度が低めで、毎回の内容が違い、人の判断が入る作業に向く。月額制が一般的。
- API(Application Programming Interface)利用
- 自社のアプリやシステムからプログラムでAIを呼び出して使う形。決まったパターンの大量処理や、業務システムへの組み込みに向く。処理量に応じた従量課金が一般的。仕組みの詳細は『IT基礎』第9話で扱う。
- 今日学んだこと
- 主要な生成AIサービスは3つ(ChatGPT=多機能、Claude=安全性・長文、Gemini=Google連携)。業務での入り口にはUI利用とAPI利用の2つがあり、まずはUI利用から試すのが安全。APIの仕組み自体は『IT基礎』第9話で詳しく学ぶ。
- まるやまマートとの関係
- ふだんの商品説明づくりや壁打ちはUI利用で十分。お問い合わせ自動分類や夜間バッチでのレビュー要約のように、量と定型性が増えてきた業務はAPI利用の候補。Googleツールを使っている点はGeminiと相性がよい。
- 選び方の指針
- ①まず無料プランで3サービスを触る、②同じ質問を投げて回答を比較する、③UI利用で効きそうかを確かめる、④量と繰り返しが多い業務だけAPI利用を検討する、という4ステップで整理する。
- フェアに向けて
- 来年の子育て家庭応援フェアでも、商品紹介文・お知らせ文の下書きはまずUI利用で試す。1日数十件〜数百件規模の繰り返し作業が見えてきたら、API利用を検討する。
