生成AI入門コース
~第6話 業務でAIを選び、安全に使う基本~
第5話では、主要な生成AIサービスとしてChatGPT(OpenAI)、Claude(Anthropic)、Gemini(Google)の3つを比較した。それぞれに特徴があり、まずは無料プランで複数を試して、自分の業務に合うものを見つけることが大切だと学んだ。神谷は実際に商品説明文の下書きやメール文面、アイデア出しに使ってみて手応えを感じたが、同時に「業務で本格的に使うとなると何に気をつければよいのか」という疑問を抱えるようになった。
業務で使うということ

前回の学習を踏まえ、神谷は3つのサービスを実際に無料で試してみた。商品説明文の下書き、メールの文面作成、アイデア出しなど、いくつかの作業で手応えを感じた。しかし同時に、神谷のなかには新たな不安が生まれていた。



情報を入れるリスク




西園寺は、業務でAIを使う際に入力してはいけない情報の例を挙げた。神谷はノートに5つのカテゴリを書き写しながら、自分の手元にある資料と照らし合わせていった。
⚠ AIに入力してはいけない情報の5カテゴリ
- 個人情報 — お客様の氏名、住所、電話番号、メールアドレス、購買履歴など
- 機密情報 — 未公開の売上データ、取引先との契約内容、社内の人事情報など
- 認証情報 — パスワード、APIキー、アクセストークン、社内システムのログイン情報など
- 知的財産 — 開発中の商品企画、特許に関わる技術情報、未公開のレシピや配合など
- 第三者の著作物 — 他社の販促資料、購入した素材、許諾のない文章・画像など
神谷は、いちばん上の「個人情報」の行に下線を引いた。氏名や住所、購買履歴といったお客様の情報は、個人情報保護法でも慎重な取り扱いが定められている。外部のAIサービスに気軽に入力していいものではない、と神谷は自分に言い聞かせた。




社内ルールの考え方


西園寺は、小規模な会社でもまず決めておくべきルールの枠組みを整理した。
業務AI利用ルールの基本項目
- 入力してよい情報の範囲 — 公開情報、一般的な文章のみ可。個人情報・機密情報・第三者の著作物は不可
- 出力の確認ルール — AIの出力をそのまま公開・送信せず、必ず人が確認する
- 利用するサービス — 会社として承認したサービスとプランのみを使用する
- 責任の所在 — AIが作った成果物の最終責任は、利用した人(または管理者)にある
- 記録 — どのような業務でAIを使ったかを簡単に記録する




著作権・ライセンス・コスト感



著作権:入力と出力の両方に注意




ライセンスとコスト感:詳しくは社長報告メモに整理
西園寺はライセンスとコスト感については、要点だけを短く整理してくれた。ライセンスは「同じサービスでも、無料プランと有料プランで生成物の商用利用や学習利用の条件が変わる」ため、社内ルールに書く『承認サービス』はサービス名だけでなく「どのプラン」まで決めるのがコツ。画像や音声は文章よりライセンス条件が複雑になりやすい点だけ覚えておけば、当面は十分だ。
コスト感は、ふだんのチャット画面(UI利用)は月額定額、APIは使った分だけ課金される従量課金、という2系統がある——という大枠だけ押さえる。まるやまマートの規模なら、まずは月額定額プランの範囲で運用し、APIは必要が出てきたら検討すれば間に合う。詳細な仕組みは『IT基礎』第9話で扱う。


最初の一歩



神谷はメモを取りながら、最初に試せそうな業務をリストアップしていった。社内向けの資料の下書きであれば、お客様の個人情報を入れる必要はなく、第三者の著作物に触れる場面も少ない。コストも、いま試している無料プランか、せいぜい月額1,000〜3,000円程度の定額プランで収まる見込みだ。


これからの学び






📌 覚えるポイント
- 業務でAIを使う場合、入力NGは5カテゴリ:個人情報・機密情報・認証情報・知的財産・第三者の著作物
- 多くのサービスでは、入力データがAIの学習に使われる可能性がある。企業向けプランでは学習非利用の設定が可能
- 会社として最低限のAI利用ルール(入力範囲・確認ルール・承認サービス/プラン・責任所在・記録)を1枚にまとめる
- 著作権は『入力側(第三者の著作物を貼らない)』と『出力側(既存表現に似ていないか確認)』の両方で考える
- ライセンスはサービス名だけでなくプラン単位で決める。画像・音声は文章より条件が複雑になりやすい
- 料金は『月額定額』と『API=従量課金』の2系統。まずは定額プランから始め、APIは必要が出たら検討する
- AIの最終責任は人間にある。リスクの低い社内向け業務から小さく始めて、効果を確認してから範囲を広げる
📖 覚える用語
- 情報漏洩リスク
- AIサービスに入力した情報が外部に流出したり、学習データとして利用されたりするリスク。無料プランでは入力データが学習に使われる場合がある。企業向けプランでは非利用の保証があることが多い。
- AI利用ポリシー(社内ルール)
- 業務でAIを使う際の社内規定。入力してよい情報の範囲、出力の確認方法、利用するサービスとプランの承認、責任の所在、利用記録などを定める。規模に関わらず、AIを業務利用するなら最低限のルールが必要。
- データの学習利用
- ユーザーが入力したテキストや情報を、AIモデルの改善・再学習のために利用すること。多くのサービスでは設定やプランによってオプトアウト(拒否)が可能。
- ヒューマン・イン・ザ・ループ
- AIの出力を公開・利用する前に、必ず人間が内容を確認・承認するプロセスのこと。ファクトチェック、適切性の判断、最終的な責任判断を人間が行うことで、AIのリスクを低減する。
- 著作権(入力側/出力側)
- 業務AI利用での著作権論点は2つ。入力側は『第三者の著作物を許諾なく外部サービスに渡さない』こと。出力側は『生成物が既存表現と類似していないかを確認してから公開する』こと。短いコピーや画像でも、必ず人が見て判断する。
- ライセンス(利用規約)
- 生成AIサービスを使ってよい範囲を定める契約条件。商用利用の可否、学習への利用、生成物の再配布可否などが含まれる。同じサービスでもプランごとに条件が異なることが多く、『どのプランか』までセットで社内承認する。
- API(従量課金)
- 自社システムやアプリにAIを組み込むための呼び出し方。送信したテキスト量と返ってきたテキスト量に応じて少額の課金が積み上がる『従量課金』が一般的。電気・ガスのメーター料金に近い感覚で、月間上限を決めて運用する。
- 個人情報保護
- 氏名、住所、電話番号、メールアドレス、購買履歴など、特定の個人を識別できる情報の取り扱いを保護すること。AIサービスへの入力時はとくに注意が必要で、業務利用では入力可否のルール化と、個人情報保護法に沿った扱いが求められる。
- 今日学んだこと
- 業務でAIを使う場合、入力NGは5カテゴリ(個人情報・機密情報・認証情報・知的財産・第三者の著作物)。会社として最低限の利用ルールを1枚にまとめ、リスクの低い業務から小さく始めるのが安全。
- 著作権・ライセンス・コスト感
- 著作権は入力側・出力側の両方で考える。ライセンスはサービス名だけでなくプラン単位で社内承認する。料金は月額定額とAPI従量課金の2系統。当面は定額プランの範囲で運用し、APIは必要が出たら検討。
- 全6回の学びのまとめ
- 生成AIの基本概念、LLMの仕組み、プロンプトの書き方、ハルシネーションへの対処、主要サービスの比較、業務利用の注意点。全体像と判断の地図を持てた。
- 社長への報告案
- 生成AIの基礎知識を学び終えた。まずは社内資料の下書きなど、リスクの低い業務で試験的に活用したい。AI利用ルールの素案(入力範囲・出力確認・承認サービス/プラン・責任所在・記録の5項目)を作成して相談させていただきたい。
